ガラスをこする

毎日ガラスをこすっている。

ここでいうガラスとは、スマホ画面のことである。Twitterをやっているときも、LINEを返信しているときも、指先はいつもガラスをこすっている。

分かりやすくするために、スマホの電源を消してみるといい。そして真っ暗になった画面を見つめながら、Twitterをやるふりをしてみるのだ。ほら、こすってる。

ボタンが付いた装置だと、電源を切ってもボタンの感触を得ることはできる。でもスマホの場合、電源を切ればそこに残るのはただのガラスだ。

何も映ってない暗闇をこすっていると、こんなものが世界とつながっているだなんて、にわかに信じられなくなってくる。みんなタヌキに化かされていて、実はすべてが夢なのではないか。

かつて、ランプをこすると魔人があらわれる物語が作られた。現代風にするならば、きっと魔神はガラスをこすると現れる。よく画面にヒビが入った状態で使っている人を見かけるけれど、あれも冷静にみると割れたガラスをこすっているわけで、20年前だったら完全に奇行である。

すごい時代に生きているなと、ひとり感慨にふけってしまった。