竹のゴルフバッグ

大学の研究室にいたころ、局所的にゴルフが流行っていた。ゴルフと言えば敷居の高そうな印象だが、ショートコースを回るだけなら2000円程度でいけるらしい。みんな楽しそうにやっていたので、じゃあ自分もやってみるかと、道具をそろえ始めた。

まずゴルフクラブ。ゴルフ界のブックオフみたいな中古ショップに行くと、極めてどうでもいい感じのアイアンが一本100円で売られていた。それを5本ほど買ってくれば、はいおしまい。計500円の出費である。こだわりがないって素晴らしい。

ただ困ったのがゴルフバッグである。こちらはさすがに100円では買えない。なので、竹で作ろうと思った。いや、なんで竹で作るんだよ! ってツッコミが入りそうであるが、当時の私は何の迷いもなく「竹で作ろう」と、そう思ってしまったのである。

さて竹を入手すべく周りに聞いて回ったところ、実家に竹林があるという知り合いが偶然にもいたので、お願いして帰省ついでに竹を一本持ってきてもらった。それを適当な長さに切断し、不要な節を抜けばあっという間にゴルフバッグの完成である。

世界でただひとつ、竹100%のマイ・バンブー・ゴルフバッグ。

さっそく大学に持って行って見せびらかしていると、俺も作るぞ! と突如名乗りを上げる知り合いがいた。まさかのライバル出現である。彼はおもむろにホームセンターで塩ビパイプを買ってきたかと思うと、それをそのままゴルフバッグにしてしまったのだ。塩ビパイプならば、竹のように節を抜く必要もなく、底に末端用のパーツを取り付けるだけ。ほぼ買ってきたまんまだ。一本取られた! と思った。

結局、私は竹で作ったゴルフバッグを、知り合いは塩ビパイプで作ったゴルフバッグを持って、一緒にショートコースを回った。

……と記憶している。不思議なのは、当時の写真が全くないのだ。途中、知り合いの実家から竹をもらうあたりから、話としてあまりにもふわふわしすぎである。全部夢だったのではないかと思うこともある。

でも自分の胸には、あのときの竹の感触がたしかに残っている。なにせゴルフクラブが5本も入った太い竹なのだ。ユニバーサルデザインとは対極の持ちづらさであり、両手で抱え上げながら運んだのを覚えている。淡い青春の一ページである。